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たゆたい


わたし は なんでも知っている
わたし は この世の 成り立ちを知っていて
あなたがいつ泣いているのかを 知っている

カゲロウの動かなくなる瞬間を毛穴で感じ
金属が 柔らかな肉を貫く過程と共に
幾ばくの眠りにつく

しかし わたし は 
あの人を知らない
幾万度も隣りに寄り添い、呼吸を合わせてみても
ふと振り返ると、全く見知らぬ人が居る
それは、悪い夢のようで、覚めてしまわないことを願っている

初めて会ったその瞬間から懐かしいあなたの記憶にゆられて
わたし は
黒い海と空のはざまをさがしている

それはどうしても覚める夢

このたゆたいが
どこに行くのか
わたし は 知らない

そろそろ あなたが 迎えにきてしまう

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