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salty war

私は、
彼女の毒を飲む

身体がしびれて、

またもう一度、

彼女の毒を飲む。

忘れてしまった身の上を
どこかの誰かが覚えていて、
行ったこともない海辺でその話をしている。

ありがたいのか...、
ありがたがるべきなのか
嫌悪するべきなのか、
べきはないのか
というのもわからないべきなのか。

何を残すというのか

「ここあたりの、ここんとこ」
と指さす胸には消えない傷。

その傷がなんだというの

「その傷が、
あんたに何をしたか、
あんたは知らない。」

そう言う

「あぁ知らないよ」

「何をしたんだい?この傷は、私に」

消えない、消えない、
消えない傷ってことは、
なかったことにしたくても出来ないってこと

「とけない呪いですらいつかはとけるというのに
その傷は、
お前の消滅まで一緒に在る。
君の傍を
何があっても離れることのない
親友と思って仲良くするんだね。」

その傷で、また人を傷つけてしまう前に、
どこかへ行くんだね。

遠く、遠くまで
行くことだね。

もう誰にも会うまい。

そう誓っても、
また
会うんだろう?

でも、
誓うことが無意味じゃない。
誓うことに昨日をみることが無意味なんだ。

きっと君が消滅してなお、
その傷は伝染していくから、

だから、

大丈夫。

どこかで誰かが

君の、なかった身の上を
行ったことのない海辺で話してくれる。

だから大丈夫。

その傷は、
どこかでつながっている。

さようならを言っても

大丈夫。

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