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雲は綿菓子か

下の方では、みんな、強い陽射しの中、
裸同然で、海は絶え間なく太陽を反射してるし、
犬も、人も寝っころがってるし、
人種なんてまるでないし、
誰が居てもなんら不思議でないんだし、
それでも、くねくねとくねくねと、
私は登ってみる。
ずっとずっと登ってみる。

すいぃっと、入ってくる空気は、私の肺内を冷たくしはじめ、
植物のすがたも肉付きがよくなり、身を守るような葉や枝になる。

一つのとんがりのてっぺんに立って底の見えない
底をのぞいてみる。
下から、岩はだをはって、どんどんどんどん
雲が登ってくる。幾度か、完全に雲のど真ん中に入る。
前も見えない。

遠くからでは、まったく動きのないように
見える雲も、中では、こんなにも活動している。

時折、雲が途切れるその合間、遠くに、
小さな、小さな、点在する何かが見える。

辺りは断崖絶壁。
「あれはずっとずっと古くからここに住む人たちの村です」
「え、でも」
「はい現代でも、あそこに行こうとするとヘリコプターを使うか、
何日もかけて、危険な道のりを足を使って行くしかありません」

「あれが、本当の秘境ですよ」
また、雲の中に隠れ、見えなくなった。

「でも、あの中には、学校もあって、すべて彼らに必要なものは
そろっています。」

でも、下に行けば、この島の気候はおだやかで、
あたたかい。わざわざそのような場所に世帯を
かまえるような理由がないはず・・・。
本当に、もともと人がわざわざ住む理由が
ないはずなのだ。

その土地の、奴隷制度の歴史は長い。
ナポレオンが通りかかった時なんて、
もうすでに、「ずっと前から、何度もその話、出ましたよ」
って言われるくらい、長い。

そんな中、自由を選び、誰の足も及ばぬところまで行き、
天空の村をつくった。

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2000年を過ぎ、もう2008年を迎えようとしている中、
週に一度ヘリコプターに乗って村の学校に来る先生や、
少しの物資を運ぶ人たち以外に会わず、
4年前にひかれた水道管もさして使うことなく、
やはり、今日も、また、天空の村で、新たな命も
産まれてることなんでしょう。

もう、今は、その島の人口を
奴隷人口 00000人 解放奴隷000人などと、
分けることはないが、
かつて天空の村の民はこう呼ばれていた。
『自由民』

長い長い時をかけて、みんなが混ざった時、
そこに住む人たちのなかには、
非常に優しく流れる『普通』がありました。

もう大丈夫、そう言う言葉があちこちで聞こえてきていた。
「我々には、人種などない」
笑顔でその人自身を放っておく、
いつのまにか、そう決まっていた。

そんな島もアルのです。

いいんだよ そう言ってそこにいた
そんなあなたの面影が、
師走の終わりに寂しくも暖かい。